本日付毎日新聞の記事には大笑いさせてもらった。外国人研修生を受け入れる事業協同組合「栃木情報センター」が公式ホームページ上で、「(研修生は)安価な労働力コスト、安定した若手労働力と身分保障された人材確保が可能」「月々12万円からという低コスト」「国家間の賃金格差の分、比較的低コストの労働力を確保することができます」などと謳っていた、というのだ。
なるほど「低賃金」で「安定して」しかも「若い」労働力というのは今の日本にもっとも欠けていて、だからこそ企業が渇望していることを浮き彫りにはしているが、「それを言っちゃあ、オシマイよ」(車寅次郎風に)てなもんである。毎日の取材に対してセンターの理事長さんは「不適切な表現だった。日本の良さを学んで母国との架け橋になってほしいという願いは変わりない」なんて建前を答えさせられているが、HPでここまで本音をさらけ出しちゃったあとだ、いっそこのと「本当のことをズバリ書いちゃいけなかったのに、誰かが書いちゃったらしく、不適切でした」くらいに開き直ったらどうか。 それにしてもこのセンターさん、何をこんなに焦っているのだろう。そうか、受け入れ先が見つからないとピンハネできないのか。「栃木事業センター」なんて体の好い名前をしてはいるが、つまりは現代の「人買い」「女衒」なのだな。 #
by pabon
| 2004-10-19 08:27
テレビニュースでダイジェストを見ただけだが、17日の日本シリーズ第二戦は「逆転、また逆転」の好ゲームだった。ところが、18日付の主要スポーツ紙6紙のうち、ニッカンは「松井のプレーオフの大活躍」を、サンスポにいたっては「上原が極秘メジャー観戦」をトップに据えているではないか。松井の活躍はたしかにすごいが、上原の渡米が白熱する日本シリーズを押しのけていいのかな?
スポーツ新聞の愉しみといえば、結果をすでに知っている前日の試合を紙面で追体験することがメインかとばかり思っていたのだが、この2紙は1年締めくくりの日本シリーズでもその機能は「副次的」と判断したことになる(もちろん両紙とも1面以外では日本シリーズをちゃんと展開しています)。あ、サンスポは第一戦後の17日紙面もトップは競馬だ。「きょう秋華賞」というわけだが、これってクラシックレースじゃあないよね?それでも1面か?こうなると「意地でもシリーズをトップにしない」っていう強い意志を感じるぞ。 日本シリーズはそこまで国民に無視されているのか?で、関東地区の世帯視聴率を見てみると、TBSが中継した第一戦は17.1%、フジテレビ中継の第二戦が16.3%。うーん、「もはや国民的大イベントではない」ことは間違いないが、無視できる数字でもない。微妙な数字だ。 #
by pabon
| 2004-10-18 08:56
あの公害病がなかったら、熊本で漁師を継いで平凡に暮らし、記者会見だの訴訟だのとは無縁に過ごしていたに違いない。関西水俣病訴訟原告団長の川上さんはそんな風貌のおじいさんだった。最高裁が国や県の行政責任を認めた15日、そのおじいさんが記者会見で言った。「裁判の22年は長い年月だが、命を懸けてきたから、ほんの短い時間に感じられた」。水俣病の発見は昭和31年、毎日食べていた水俣湾の魚が水銀に汚染されていた。川上さんは大阪に移り住んでから公害病の認定を申請したが、未だに認定されていない。そして22年もかかった訴訟。
企業倫理が向上したためか、あるいは相次ぐ訴訟のために企業がそのリスクを回避しようとした結果なのか、高度成長期に各地で起きた公害病も最近はほとんど発生しておらず、こうした訴訟関連ニュースもなんとなく「過去のもの」という手触りがある。しかしその間にも川上さんたちは「命をかけて闘ってきた」のである。 平凡に過ごすことができたはずの人生を、「国との命をかけた闘い」に変えてしまった公害病。国や企業は、かけがえのない被害者たちの人生をどのようにつぐなえるというのだろうか。 #
by pabon
| 2004-10-16 01:40
嗜好品というのは、国語辞典風に言わせると「栄養摂取を目的とせず、香味や刺激を得るための飲食物。酒・茶・コーヒー・タバコの類」(広辞苑)となる。そして人類はその歴史において「嗜好品を愉しむための工夫」をあれこれしてきたわけで、これも「文化」と呼ぶ。
13日付の毎日によると政府税制調査会の石弘光会長は発泡酒などについて「低価格競争を誘い、酒文化を損なっている」と批判したという。記事によれば石氏は「学生は本物のビールを飲まないから、まがい物のビールを飲んで『ああまずいや』と焼酎に行っている」「低価格競争がビールの味を忘れさせ、酒文化を損なっている」という論理展開になるらしい。 現代の日本で酒文化が「損なわれている」かどうかは知らない。「ビール!」と注文すればなぜかキリンばかりが出、ウィスキーといえば「ダルマ」ばかりだった昭和末期までに比べれば、世界各地の銘酒を格安で飲め、しかも女性も気兼ねなく自宅の外で飲酒を愉しめる社会になっている現代は「酒文化がますます発達している」という表現の方が適切だろう。そもそも発泡酒とビールの味の違いをしっかり区別できる日本人がどれだけいるのか?ましてや酒に親しむことに慣れていない学生が焼酎に「流れている」と石氏は本当に信じているのか? 味ではビールとほとんど区別ができない発泡酒というカテゴリーが生まれたのは、ひとえに酒税のためだ。ビールというカテゴリーから外れた製品ならば酒税が安く済む。そして去年になって政府が発泡酒の酒税も上げたために、今ではそこにもカテゴライズされない「ビール風飲料」なるものまでが登場している。つまり政府とメーカーのイタチゴッコになってしまっているわけで、結果的に税金を取り損ねている現状に石氏は苛立っているのだ。「発泡酒がまずいから・・・」なんて、八つ当たりだよね。 メーカーも消費者も、誰だってできることなら余計な税金は払いたくない。だから酒税の区別を利用するという「創意工夫」をして、なんとか安価にビール(ビール風飲料)を愉しもうとしている。この創意工夫こそが「酒文化を守る」ことなのであり、売れ筋商品を狙い撃ちして税金を課すことで文化を損ねているのは政府の方である。「税金を取るなら、こんな庶民の楽しみを狙い撃ちしていないで取れるところからキッチリ取ってくれ。それができないなら歳出を減らす努力をして頂戴」ということだ。素人の床屋談義みたいだけど。 それにしても一歩家庭を出るとどんな庶民的な店にもビールしか置いていないのはどうしてだろう。ねいちゃんとのデートならいざ知らず、居酒屋で同僚と飲む時には見栄もクソもないから発泡酒やビール風飲料でもいいのに、その選択肢がないのだ。やっぱり店は客単価を上げたいのだろうか?それとも政府の陰謀? #
by pabon
| 2004-10-13 19:54
「オリエンタルランド」。この名前を聞いて「ああ、ディズニーランドをやっているところだね」とすぐに分かる日本人はどれだけいるのだろう?「オリエンタルランド」っていう遊園地はないからピンと来ない人も多いはずだ。調べてみると「オリエンタルランドグループ」というのができていて、連結対象は16社にものぼる。ホテルの運営やディズニーリゾートラインの運行や「ディズニーストア」の展開を行う会社などは、業務がディズニーランドと密接するだけに理解しやすい。
こうした子会社の中に「OLC・ライツ・エンタテインメント」というのがある。グループのホームページでは主な事業内容として「知的財産権ビジネス」を挙げているが、この会社がニュージーランド政府系の基金と映画を製作するそうだ(9日付日経)。NZの映画なんてあまり聞いたことがなかったが、日経は「NZの映画ビジネスは国際的に評価が高まっている」としている。今回はNZのオートバイ世界記録保持者の挑戦を描く実写映画を作るのだそうだ。 オリエンタルランドグループの危機感はよくわかる。21周年を迎えたディズニーランドはいつも大混雑、定期的に導入される新しいアトラクションはしっかり話題になる。しかし所詮はディズニーという「他人の褌」を借りてのテーマパーク運営、その証拠にオリエンタルランド側が主導権を持って造ったディズニーシーはランドほどの集客力はない(個人的にディズニーシーはビジネスとしても遊び場としても失敗作だったと思う)。だからこそ、この「ライツ・エンタテインメント社」はディズニー一辺倒からの脱却を目指す戦略会社の位置づけだろう。 しかし前途は多難だぞ。ライツ社のホームページを見るとイチオシのキャラクター「ネポス・ナポス」が出てくるのだが、何だこりゃ?茄子なのか?ちっとも魅力がないのだよ。泣き出す子供も出るんじゃないか?これじゃあ「ディズニーあってのオリエンタルグループ」だよ、やっぱり。そして次は映画製作か。大丈夫か? こうしたコンテンツビジネスは本当に難しい。テーマパークとコンテンツビジネス、「夢という不定形なものを売る」ところだけは似ているようだが、不定形なだけにノウハウをマニュアル化できるものではない。たとえばテレビ局を見よ。おなじような成り立ちの会社で、同じような連中が作っている番組ばかりだろうに、フジテレビとテレビ朝日では視聴率が明らかに違う。「どうすりゃ見てくれるんだ」ということを何十年も考え抜いているテレビ局ですらノウハウは掴めないのだ。オリエンタルランドの戦略展開も、「お手並み拝見」というところだろう。 #
by pabon
| 2004-10-09 22:56
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